今回はアラン島のシングルモルト、アイル・オブ・アランを紹介しましょう。このシングルモルトはアップルパイやシナモンティー、ショートブレッド、ドライフルーツなどの風味を放ち、ボディは中庸で気軽に飲めるウイスキーです。アイル・オブ・アランは、短期間別の樽で後熟(仕上げ熟成)を行うウッドフィニッシュに強いこだわりもつ蒸留所としても知られ、その種類の多彩さはアイランドウイスキーの中では随一でしょう。オロロソシェリーやポートはもちろんのこと、ペドロヒメネス・シェリー、カルバドス、コニャック、ラム、シャトー・マルゴー、マルサラ(デザートワイン)、グラン・クリュ・シャンパーニュなど、枚挙にいとまがありません。
アラン島はスコットランド南西部にあるキンタイア半島の東に位置する、広さが430平方メートルほどの島です。蒸留所がある周囲の島々と比べますと、アイラ島の0.7倍、ジュラ島の1.2倍程度の大きさです。アラン島にはスコットランドの自然のあらゆるものが存在し、気候的・地理的な観点から「スコットランドの縮図」とも呼ばれています。蒸留所があるのはこの島の北岸ロッホランザ村のはずれで、敷地から北西500メートルほどのところには、村と同名の大変風光明媚な入り江が広がっています。
アイル・オブ・アランはかつてシーバス・ブラザーズ社の取締役だったハロルド・カリー氏が、同社のマスターブレンダーだったジミー・ラング氏を引き連れて、1995にオープンしたまだ新しい蒸留所です。規模は比較的小さく、ポットスティルは初留・再留の計2基で年間生産量は750,000リットル。仕込み水はかつてはナ・デヴィ湖から引いていましたが、現在はイーソン・ビオラック川の水を利用しています。またアイル・オブ・アランではハウススタイルとしてピーテッド麦芽を使用しませんが、近年の世界的なアイラモルト人気を受け、2011年ころから全生産量の2~3%をピーティな原酒(約20ppm)に切り替えています。
かつてこの島の南部にはラグという蒸留所(Lagg, 1825-1837)が操業していましたが、1837年に閉鎖されてしまい、それ以来アラン島には蒸留所がありませんでした。ですのでアイル・オブ・アランは、この島にとって約160年ぶりの蒸留所だということになります。なお非合法の蒸留所も含めれば、最盛期にはこの小さな島に50近い蒸留所がひしめいていたという記録もあり、地元のウイスキーは島民から「アラン・ウォーター」として親しまれていたそうです。
最終更新日
2012年02月15日 07時41分28秒